【新しい働く場所】地方で進化するコワーキング・シェアオフィス:移住・複業・ワーケーションの拠点に
都市部での画一的な働き方や、自宅でのリモートワークに限界を感じている方もいらっしゃるかもしれません。同時に、地方への移住や多拠点生活、複業といった、場所に縛られない多様な働き方に興味を持つ若年層が増えています。そうした中で、地方における「働く場所」の概念が大きく変わりつつあります。
かつて地方での仕事といえば、特定の企業や事業所に通勤するのが一般的でした。しかし現在、空き家や遊休施設をリノベーションしたコワーキングスペースやシェアオフィス、企業のサテライトオフィスなどが全国各地に誕生しています。これらの新しい「働く場所」は、単に作業をするスペースに留まらず、新しい働き方を実践したり、地域と繋がったりするための拠点として注目されています。
この記事では、地方で進化するコワーキングスペースやシェアオフィスが、若年層の新しいライフスタイルやキャリアにどのような可能性をもたらすのか、具体的なメリットや活用方法、事例を通してご紹介します。
地方に増える新しい「働く場所」とは?
地方で近年増加している新しい「働く場所」には、主に以下のような形態があります。
- コワーキングスペース: 様々な職業や所属の人が同じ場所を共有し、互いに刺激し合いながら働く場です。オープンスペースが中心で、個人作業に適した環境が提供されます。インターネット環境や電源、プリンターなどの設備が整備されています。
- シェアオフィス: 複数の個人や法人が区画されたオフィススペースを共有する形態です。個室や専用デスクが提供される場合が多く、よりプライベートな空間で集中して作業できます。
- サテライトオフィス: 企業が本社や主たる事業所から離れた地方などに設置する小規模なオフィスです。社員が地方でリモートワークを行う際の拠点や、地域との連携を図るために利用されます。
これらは明確に区分できない場合も多く、複数の機能を併せ持つ施設も増えています。例えば、コワーキングスペース内に個室のシェアオフィス機能があったり、企業のサテライトオフィスの一部を地域住民に開放したりするケースなどです。
地方で「新しい働く場所」を利用するメリット
地方にあるこうした新しい働く場所を利用することには、若年層にとって様々なメリットがあります。
- 多様な働き方への対応: リモートワーク、フリーランス、起業準備、複業といった、場所に縛られない働き方を実践する上で、安定したインターネット環境や集中できる作業スペースを確保できます。自宅では集中しにくい、オンオフの切り替えが難しいといった課題を解決できます。
- コスト効率: 都心部のオフィス賃料と比較して、地方のコワーキングスペースやシェアオフィスの利用料は手頃な傾向にあります。必要な時だけ利用できるドロップインや、月額制など多様な料金プランがあり、自身の働き方に合わせて無駄なく利用できます。
- 地域との繋がり・交流: 最も大きなメリットの一つが、地域の人々や同じ空間で働く多様なバックグラウンドを持つ人々との交流機会です。施設の運営者や他の利用者との会話から地域の情報が得られたり、思わぬ仕事の繋がりが生まれたり、地域プロジェクトへの参加のきっかけが見つかったりすることがあります。単なる作業場ではなく、コミュニティのハブとしての機能を持つ場所が多いです。
- 心身のリフレッシュ: 自宅やカフェ以外の場所で働くことで気分転換になり、創造性の向上やストレス軽減に繋がる場合があります。自然豊かな環境にある施設や、ユニークなコンセプトを持つ施設を選ぶことで、より豊かなワーク体験が得られるでしょう。
- 移住や定住のお試し: 地方への移住を検討している方が、本格的な移住の前に特定の地域のコワーキングスペースを拠点に短期間滞在し、仕事と生活のリアルを体験する「お試し移住」の場としても活用されています。
若者はどう活用できる?具体的な方法
では、具体的にこれらの場所をどのように活用できるのでしょうか。
- リモートワークの常用拠点として: 地方の実家や希望する地域に移住し、企業のフルリモートワークを続ける場合の常用オフィスとして利用します。通勤時間がなくなる分、自分の時間や地域活動に充てられます。
- 複業・パラレルキャリアの実践の場として: 複数の仕事を持つ「複業」や「パラレルキャリア」を実践する上で、それぞれの仕事に必要な作業を効率的に行う場所として活用します。異なるプロジェクトの資料を広げたり、オンライン会議を行ったりするのに適しています。
- ワーケーションの拠点として: 観光地やリゾート地だけでなく、地域の日常に溶け込むような地方都市や町村にあるコワーキングスペースを拠点にワーケーションを行います。日中は集中して仕事をし、業務時間外や休日には地域の観光やアクティビティを楽しむといったメリハリのある滞在が可能です。
- スキルアップ・学習の場として: 資格取得のための学習やオンライン講座の受講など、集中して学びたい時の自習室としても利用できます。同じように学ぶ仲間と出会える可能性もあります。
- 地域プロジェクトへの参加: コワーキングスペースが地域イベントを企画・運営している場合や、地域で活動するキーパーソンが集まる場となっている場合があります。こうした機会を通じて、地域の課題解決や新しいプロジェクトに若者ならではの視点で関わることができます。
地方のユニークなコワーキング・シェアオフィスの事例
全国各地には、その地域の特色を活かしたユニークなコワーキングスペースやシェアオフィスが存在します。
例えば、古民家を改修した落ち着いた雰囲気の施設、地域の木材を多用した温もりのある空間、駅に直結していてアクセス抜群の施設、特定の産業(農業、漁業、クリエイティブなど)に関わる人が集まるテーマ型施設、宿泊機能やカフェ・レストランを併設した複合施設など、多様な形態があります。
これらの施設では、単に場所を提供するだけでなく、利用者同士の交流会、地域住民とのイベント、ビジネスセミナー、メンターによる相談会など、様々なコミュニティ活動や学びの機会を提供しているのが特徴です。こうした取り組みが、利用者にとって新たな繋がりやビジネスチャンスを生み出す土壌となっています。
具体的な事例としては、○○県の廃校を利活用したコワーキングスペース「△△」では、地域の子どもたちとの交流イベントや、移住者向けの起業講座が開催されています。また、□□県の港町にあるシェアオフィス「××」は、漁師さんや水産業に関わる方々と都市部のクリエイターが集まり、新たな水産加工品のブランド開発プロジェクトが生まれるなど、異分野の交流からユニークな取り組みが生まれています。
利用する上での注意点や選び方
新しい働く場所を利用する際には、いくつか注意しておきたい点や、自分に合った場所を選ぶためのポイントがあります。
- 利用目的の明確化: 何のためにその場所を利用したいのか(集中して作業したい、色々な人と交流したい、特定の情報が欲しいなど)を明確にすることで、施設のタイプやサービス内容から候補を絞りやすくなります。
- 立地とアクセス: 自宅や滞在先からの距離、公共交通機関の利便性などを確認しましょう。毎日利用する場合は、通いやすさが重要です。
- 料金体系: ドロップイン(一時利用)、月額会員、個室利用など、様々なプランがあります。自身の利用頻度やスタイルに合った無駄のないプランを選びましょう。
- 設備と環境: 必要な設備(インターネット速度、電源数、モニターレンタル、プリンター、会議室など)が揃っているか確認します。静かに集中したいのか、BGMがあった方が良いのかなど、作業環境の好みも考慮しましょう。
- コミュニティの雰囲気: 施設によっては活発な交流がある一方、個々が黙々と作業に集中するタイプもあります。自分が求めるコミュニティの雰囲気かどうか、見学や一時利用で確認してみるのが良いでしょう。
- 利用規約: 飲食の可否、通話スペースの有無、利用時間、予約の要否など、施設のルールを事前に確認しておくことで、トラブルを防ぎスムーズに利用できます。
多くの施設で見学や一時利用(ドロップイン)が可能ですので、実際に足を運んで雰囲気を確認することをおすすめします。
「働く場所」から生まれる新しいコミュニティと価値
地方の新しい働く場所は、単に物理的な空間を提供するだけでなく、人と人、人と地域を繋ぐハブとして機能しています。利用者同士の偶然の出会いから新しいビジネスが生まれたり、地域住民との交流を通じて地域課題解決に繋がるアイデアが生まれたりするなど、様々な価値創造の可能性があります。
特に若年層にとっては、地方での人間関係やコミュニティ形成の足がかりとしても非常に有効です。地域に知り合いがいない状態で移住した場合でも、コワーキングスペースなどを通じて地域の人々と自然に繋がることができます。これは、地方での暮らしに馴染む上で大きな助けとなるでしょう。
まとめ
地方で進化を続けるコワーキングスペースやシェアオフィスは、若者の新しい働き方やライフスタイルを実現するための重要な拠点となり得ます。リモートワークや複業の実践、ワーケーション、そして地域との繋がりなど、多岐にわたる目的で活用可能です。
これらの場所は、単なる作業空間を超え、多様な人々が集まり、交流し、新たな価値を生み出すコミュニティの場として機能しています。地方での暮らしや働き方に興味がある方は、ぜひお近くや気になる地域のコワーキングスペースなどを訪ねてみてください。そこから、あなたの新しい一歩が始まるかもしれません。