【若者向け】地方で「サードプレイス」をつくる:地域に開かれたコミュニティスペース運営のリアル
都市での慌ただしい日常から離れ、自分らしいペースで、地域と深く関わる生活を求める若年層が増えています。特に、単なる住居としての場所だけでなく、地域の人々と交流し、新しい活動を生み出す「場」の存在に注目が集まっています。その一つが、「サードプレイス」としての機能を持つコミュニティスペースです。
自宅(ファーストプレイス)、職場・学校(セカンドプレイス)に続く「第三の場所」を指すサードプレイスは、心地よく滞在でき、多様な人々との交流が生まれる場です。地方においては、これが地域コミュニティの活性化や、移住者と既存住民との橋渡し役としても重要な役割を果たしています。
この記事では、地方でコミュニティスペースやそれに類する「場」を立ち上げ、運営することに興味を持つ若者に向けて、その意義、具体的なリアル、必要なこと、そして何よりも得られるやりがいについて詳しく解説します。
地方における「サードプレイス」の可能性とは
地方では、高齢化や人口減少に伴い、かつての集落機能や商店街の賑わいが失われつつある地域も見受けられます。一方で、古民家や空き店舗といった既存のストックを活用し、新たな交流拠点や活動の場を生み出そうとする動きも活発です。
コミュニティスペースは、こうした地域の課題解決の一助となり得ます。例えば、以下のような機能が考えられます。
- 地域住民の交流促進: 世代や立場を超えた多様な人々が気軽に集まり、会話や情報交換をする場。
- 移住者と地域を繋ぐハブ: 新しく地域に移り住んだ人が、住民と自然な形で知り合い、地域に溶け込むきっかけとなる場。
- 新しい活動の拠点: ワークショップ、イベント、サークル活動など、地域で新しい試みを行うためのスペース。
- 情報発信・交換の場: 地域のイベント情報、住民の特技や関心事、困りごとなどを共有する掲示板や機能。
- 学び合い・支え合いの場: スキルアップのための講座開催や、互いの困りごとを相談し、助け合う関係性を育む場。
都市部の洗練されたカフェやコワーキングスペースとは異なり、地方のコミュニティスペースは、その地域の文化や歴史、人々の暮らしに根ざした、より人間味あふれる空間となる可能性を秘めています。若者がこうした場づくりに関わることは、自身の居場所を見つけるだけでなく、地域に新しい風を吹き込むことにも繋がります。
若者が地方で「場づくり」に挑戦するリアル
実際に地方でコミュニティスペースを運営している若者の事例は少なくありません。空き家を改修したカフェ兼交流スペース、商店街の空き店舗を利用したコワーキングスペース併設の多目的スペース、地域おこし協力隊のプロジェクトとして始まったゲストハウス兼イベントスペースなど、その形態は様々です。
こうした場づくりに挑戦する上で直面するリアルな側面をいくつかご紹介します。
1. 物件探しと改修
地方には利用されていない空き家や空き店舗が多く存在します。しかし、それらを事業に使える状態にするには、多額の改修費用がかかる場合があります。補助金制度やクラウドファンディングを活用する事例も多いですが、自己資金や融資も必要となります。また、物件の状態によってはDIYでの改修が必須となり、身体的な労力も伴います。
2. 資金計画と収益モデル
家賃や光熱費、人件費(自身を含む)、イベント開催費用など、運営には継続的なコストがかかります。カフェ営業、イベント収入、スペース利用料、会員費、物販など、複数の収益源を組み合わせることが一般的ですが、利用者が少ない場合は経営が安定しないこともあります。地域住民だけでなく、外部からの誘客も視野に入れた戦略が必要です。
3. 地域との関係構築
場づくりは、地域住民の理解と協力が不可欠です。説明会を開いたり、イベントに招いたりするなど、積極的にコミュニケーションを取り、信頼関係を築く努力が求められます。地域の文化や慣習を尊重しつつ、新しい価値観をどのように地域に馴染ませていくかが重要な課題となります。
4. コミュニティ形成の難しさ
スペースを用意しただけでは、自然に人が集まり、コミュニティが生まれるわけではありません。イベントを企画したり、共通の関心を持つ人々を繋いだり、居心地の良い雰囲気を作ったりと、積極的な働きかけが必要です。利用者同士のトラブル対応や、特定のグループによる占拠を防ぐための配慮も求められます。
「場づくり」に必要なスキルと得られるもの
地方での場づくりには、多様なスキルが役立ちます。
- コミュニケーション能力: 地域住民、利用者、行政、連携する団体など、多様な立場の人々と円滑に関わる力。
- 企画・実行力: イベントやワークショップを企画し、実現させる力。
- 情報発信力: SNSやウェブサイトを活用し、場の魅力を伝え、集客する力。
- DIY・建築スキル: 物件の改修やメンテナンスに役立ちます。専門業者との連携にも必要。
- 経営・会計知識: 資金計画、経費管理、収益構造の理解。
- 地域文化への理解: 地域の歴史、文化、産業、人々の暮らしへの敬意と関心。
これらのスキルは、移住前に身につけておくことも可能ですし、実際に活動する中で学ぶことも多いです。
そして、場づくりを通じて得られるものは、金銭的な収益だけではありません。
- 地域との深い繋がり: 表面的な観光ではなく、地域の「中」に入り込んだ、人間味あふれる関係性が生まれます。
- 自己成長と達成感: 自身のアイデアを形にし、困難を乗り越える過程で、大きな成長を実感できます。
- 多様な人との出会い: 地域住民、観光客、他の移住者など、普段の生活では出会えないような多様な価値観を持つ人々と交流できます。
- 地域活性化への貢献実感: 自身が作った場が、地域の賑わいや新しい活動のきっかけとなることを実感できます。
- 自分の居場所づくり: 地域における自身の役割や、心の拠り所となる場所を自ら作り出すことができます。
まとめ:地方での「場づくり」がひらく新しい扉
地方での「サードプレイス」づくりは、確かに多くの挑戦とリアルな課題を伴います。しかし、それは同時に、都市部ではなかなか経験できないような、地域との深い繋がりや、自身の創造性を活かした活動、そして何よりも大きなやりがいを得られる可能性を秘めています。
もしあなたが、将来の選択肢として地方での生活を考えており、地域の人々と関わりながら何かを生み出したい、自分の手で居心地の良い場所を作りたいと考えているなら、「場づくり」は魅力的な選択肢の一つとなり得るでしょう。
最初から大きな施設を持つ必要はありません。まずは小さなスペースでイベントを企画してみる、既存のコミュニティスペース運営を手伝ってみる、地域のイベントに積極的に参加してみるなど、できることから一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。
「ローカル暮らし図鑑」では、これからも地方での多様なライフスタイルや具体的な挑戦事例を紹介していきます。この記事が、あなたの地方での新しい挑戦を考えるきっかけとなれば幸いです。